AI研修2026-09-06 公開11 分で読めます

AI研修に使える助成金|中小企業75%の条件と、2026年8月改正で対象外になった研修

生成AI研修に人材開発支援助成金は使えるのか。中小企業75%・賃金助成1,000円という助成額、訓練時間で変わる上限額、令和8年8月の改正で汎用的なAI研修が対象外になった点を、厚生労働省の資料から整理しました。

中田 純平 — ツナイデ・ムスブ

熊本市 / AI 実装スタジオ

並んでパソコン作業をするチーム

結論——AI研修は人材開発支援助成金の対象。ただし汎用研修は除く

AI研修・生成AI研修の費用は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」の対象になり得ます。事業展開等リスキリング支援コースであれば、中小企業は経費の75%と、研修中の賃金1人1時間あたり1,000円が助成されます。

ただし2026年(令和8年)8月3日から、汎用的な内容の研修はDX化に関する訓練であっても対象外と明記されました。「全社員向けの生成AI入門」のような研修は、そのままでは通らない可能性があります。ここが今いちばん重要な変更点です。

この記事は制度の全体像を整理するもので、採択や支給を保証するものではありません。数値はすべて厚生労働省の令和8年度パンフレットに基づいており、確認日は記事末尾の出典に記載しています。

AI研修に使える助成金は?[事業展開等リスキリング支援コース]

人材開発支援助成金には7つのコースがあり、AI・DX関連の研修で使われることが多いのが「事業展開等リスキリング支援コース」です。

このコースの基本要件は3つあります。

  • OFF-JT(通常の業務を離れて行う訓練)で実施すること
  • 実訓練時間数が10時間以上であること
  • 次の①〜③のいずれかに当てはまる訓練であること
区分 対象となる訓練
① 事業展開 新たな分野に進出するにあたり、必要となる専門的な知識・技能を習得させる訓練
② DX・GX化 企業内のデジタル化・DX化やカーボンニュートラル化を進める場合に、関連業務に従事させるうえで必要な専門的な知識・技能を習得させる訓練
③ 人材育成計画 人事・人材育成の計画に基づき、3年以内に従事予定の職務に必要な専門的な知識・技能を習得させる訓練

AI研修の多くは②に当てはめて申請することになります。なおこのコースは令和8年度末までの時限措置です。使うつもりなら今年度が最後の機会になります。

助成率と助成額[中小企業75%・賃金助成1時間1,000円]

助成の内訳は次のとおりです。

企業規模 経費助成 賃金助成(1人1時間あたり) 設備投資加算(1コースの導入費用あたり)
中小企業 75% 1,000円 50%
大企業 60% 500円

賃金助成には限度時間があり、1人1訓練あたり1,200時間までです。設備投資加算は支給対象労働者1人につき15万円、10人以上の場合は人数にかかわらず150万円が限度となります。

なお、eラーニング・通信制・定額制サービス・育児休業中訓練は経費助成のみで、賃金助成はつきません。

1事業所が1年度に受給できる助成額の上限は、通常分と加算分を合わせて1億円です。

経費助成の上限は訓練時間で変わる[30万〜50万円]

経費助成には1人1訓練あたりの上限があり、実訓練時間数で3段階に分かれます。

企業規模 10時間以上100時間未満 100時間以上200時間未満 200時間以上
中小企業 30万円 40万円 50万円
大企業 20万円 25万円 30万円

eラーニングと通信制は上の表と別枠で、中小企業15万円・大企業10万円が一律の上限です。通学制や同時双方向型の訓練と組み合わせる場合も同じ扱いになります。定額制サービスによる訓練の場合は1人1月あたり2万円です。

読み方の例です。中小企業が20時間のAI研修を1人に受けさせ、受講料が20万円だった場合、経費助成は75%で15万円、上限30万円の範囲内に収まります。ここに賃金助成が1時間1,000円×20時間=2万円加わる形になります。実際の支給額は要件の充足状況で変わるため、必ず労働局にご確認ください。

[2026年8月改正]汎用的な生成AI研修は対象外になりました

ここが今回いちばん注意が必要な点です。令和8年8月3日以降に提出する計画届から、次の但し書きが加わりました。

職業、または職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させる内容のもの(職務に直接関連しない訓練等) ※ 令和8年8月3日以降に提出する計画では、DX・GX化に関する訓練であっても対象外となります。

職業、または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの ※ 令和8年8月3日以降に提出する計画では、DX・GX化に関する訓練であっても対象外となります。

つまり「DXだから対象」という理屈が通らなくなりました。全社員に同じ内容を教える汎用的な生成AI研修は、2つ目の「職業人として共通して必要となるもの」に当たると判断される可能性があります。

対象にするには、受講する人の職務に直接ひもづいた専門的な内容として組み立てる必要があります。たとえば「全社員向けChatGPT入門」ではなく「営業担当者が提案書の下書きと顧客分析を行うための訓練」のように、誰のどの職務のための訓練かを設計段階で決めておくことになります。

対象にならない研修。よくある落とし穴

厚生労働省の資料には、対象とならないOFF-JTが一覧で示されています。AI研修で引っかかりやすいものを抜き出しました。

区分 具体例 AI研修での注意点
職務に直接関連しない訓練 普通自動車運転免許の取得講習 など DX訓練でも汎用的なら対象外(令和8年8月3日〜)
職業人として共通して必要なもの 接遇・マナー講習 など 全社員一律の生成AI入門が該当しうる
通常の事業活動として行われるもの コンサルタントによる経営改善の指導/自社の業務で用いる機器・端末等の操作説明 自社ツールの使い方説明は対象外
既存アプリの操作習得 単に既存のアプリやシステムを購入して操作方法を習得する場合 ツールの操作研修にとどめない設計が必要
職業能力開発に直接関連しないもの 講演会、研究会、見学会、オンラインサロン など セミナー形式の会は対象外になりやすい
能力習得を目的としないもの 意識改革研修、モラール向上研修 など 「AIリテラシー向上」だけを掲げる研修は危うい

カリキュラムの一部にこれらが含まれる場合、その時間は実訓練時間数から除外して数えます。除外したあとの時間が10時間以上ないと要件を満たしません。

もう1つ、費用の切り分けにも明記があります。

AI研修費用は対象経費ですが、AIツール導入費用は対象経費ではありません

「AI研修とツール導入をセットで契約し、まとめて申請する」ことはできません。見積の段階で研修費とツール費を分けておいてください。

受講回数にも制限が入りました。

  • 助成対象となる受講回数は、1労働者につき1年度で3回まで
  • そのうち、令和8年8月3日以降に提出した計画届に基づくeラーニングは1年度1回まで

訓練計画届の期限は「6か月前から1か月前まで」

手続きで最も多い失敗が、期限切れです。研修を始めてから申請することはできません。

手順 やること 時期
1 職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の策定 申請の前提として先に済ませる
2 研修内容・日程・訓練実施機関を決める 訓練開始の6か月前まで
3 職業訓練実施計画届を労働局へ提出 訓練開始日の6か月前から1か月前までの間
4 計画どおりに研修を実施し、出席簿と費用の証拠を残す 訓練期間中
5 支給申請を行う 訓練終了後、期限内に
6 労働局の審査を経て支給が決まる 審査期間は状況による

計画に変更が出た場合は変更届の提出が必要です。書類の不備と期限超過が不支給の主な原因なので、日程は3の期限から逆算して組んでください。

なお、支給申請の手続き業務は社会保険労務士の独占業務です。教育訓練機関が報酬を得て申請書を作成することはできません。研修会社が「申請までやります」と言う場合は、社労士が入っているかを確認してください。

10時間未満の研修は熊本県リスキリング応援補助金という手

国の助成金は10時間以上が要件です。半日や1日で終わる研修は対象になりません。

熊本県の会社であれば、その下を埋める制度があります。「熊本県リスキリング応援補助金」です。

熊本県リスキリング応援補助金 国 人材開発支援助成金
訓練時間 10時間未満 10時間以上
補助率・助成率 75% 75%(中小企業)
上限 1事業者あたり50万円 1人1訓練あたり30〜50万円
賃金助成 なし 1人1時間1,000円
対象経費 受講費・教材費・材料費 訓練経費
対象者 県内に事業所がある中小企業・個人事業主等 雇用保険の適用事業所

県の申請の手引きにも、国の助成金の対象となるもの(実訓練時間数10時間以上の研修)は補助対象外と明記されています。逆に「要件を超える教育訓練については、国の人材開発支援助成金が活用できる場合があります」とも案内されています。両者は競合ではなく、10時間を境に役割が分かれています。

なお、国と県の両方を同じ研修で使うことはできません。どちらか一方です。

研修の形式と、外部・内製で変わること

形式によって費用も、助成の扱いも変わります。

形式 向いている場面 助成の注意点
集合研修 一度に全員へ同じ内容を伝えたい 賃金助成の対象になる
オンライン研修(同時双方向) 拠点が分かれている・移動を減らしたい 一方的な講義の視聴は形式として認められないことがある
eラーニング 各自のペースで基礎を学ばせたい 経費助成のみ・上限15万円・1年度1回まで
伴走(現場同行型) 自社の業務に合わせて定着させたい コンサルによる指導とみなされると対象外

外部に頼むか、社内で作るかの違いも整理しておきます。

比較軸 外部研修に頼む 社内で内製する
立ち上げの速さ 早い 教材づくりに時間がかかる
費用 講師費・受講料がかかる 講師の人件費が中心
自社業務への適合 汎用的になりやすい 自社の実務に合わせやすい
助成金の扱い 対象になりやすいが内容要件に注意 別の従業員が講師となる社内研修は対象外の扱いがある
定着のしやすさ 単発だと薄れやすい 継続しやすいが担当者に負担

外部研修は「汎用的になりやすい」点が、今回の改正でそのまま弱点になりました。自社の職務に合わせた設計ができるかどうかが、助成の可否を分けます。

目的を先に決めると、研修は受けっぱなしになりにくい

研修は「AIを触ること」を目的にすると成果が見えにくくなります。実際にあった例です。

ある学童・キッズクラブで、参加6名・全2回の画像生成AIの体験講座を行いました。テーマは「パパママにプレゼントを贈ろう」でした。作ったものを家族に渡すところまでを目的にすると、AIを触ること自体が目的にならずに済む、という狙いでした。反応がよく、講座のあと2名が親子向けのAI塾に参加しました。

大人の業務研修も同じです。「議事録要約を毎回この手順でやる」「見積文を30分で下書きする」など、終わったあとに何ができればよいかを先に決めると、受けっぱなしになりにくくなります。

そしてこの「誰のどの職務のためか」を先に決める作業は、今回の改正への対応そのものでもあります。目的が具体的なほど、助成の要件にも合いやすくなります。最初にどの業務から始めるかは 中小企業がAIを入れる最初の一歩 も参考にしてください。用語でつまずいたときは AI・DXの用語集 をご覧ください。

助成金があるからと目的のない研修を組むのは本末転倒です。次に当てはまるなら、いったん立ち止まってください。

  • 研修後に使う業務が決まっていない
  • 計画届の期限に間に合わない日程で進めようとしている
  • 書類管理や進捗確認の担当を置けない

助成は費用の一部を後から補うものです。手元資金がない状態を前提に計画するのは避けてください。

出典

助成率・上限額・要件は確認日時点の公式資料の内容です。制度は年度と改正で変わります。最新は厚生労働省の公募要領・各コースの支給要領、および管轄の労働局でご確認ください。個別の可否判断は労働局が行います。

AI研修の助成金申請、通す第一歩は「誰のどの職務か」の1行

研修を検討しているなら、今日は「誰の、どの職務のための研修か」を1行で書き出してください。

「全社員向けの生成AI研修」と書いたなら、それは令和8年8月3日以降の計画届では対象外になる可能性があります。「営業担当3名が、提案書の下書きと商談記録の要約を自分でできるようになる」まで具体化できれば、助成の要件にも、研修の成果にも近づきます。

よくある質問

Q.生成AI研修は人材開発支援助成金の対象になりますか

職務に直接関連する専門的な知識・技能を習得させる訓練であれば対象になり得ます。ただし令和8年8月3日以降に提出する計画届では、DX化に関する訓練であっても、職務に直接関連しない内容や職業人として共通して必要な内容は対象外と明記されました。カリキュラムの作り方で結論が変わります。

Q.中小企業の助成率は何パーセントですか

事業展開等リスキリング支援コースの場合、経費助成が75%、賃金助成が1人1時間あたり1,000円です(令和8年度パンフレットP38)。大企業は経費60%・賃金500円です。コースによって率が異なるため、他のコースを使う場合は該当コースの資料で確認してください。

Q.研修を先にやってから申請しても間に合いますか

間に合いません。訓練計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に提出する必要があります。研修を始めてしまうと、その訓練は助成の対象外になります。日程は計画届の期限から逆算して決めてください。

Q.ChatGPTの使い方を教える研修は対象になりますか

内容によります。厚生労働省の資料では「単に既存のアプリやシステムを購入してその操作方法を習得する場合」は対象にならないと明記されています。ツールの操作説明にとどまらず、担当者の職務に直結した専門的な内容として設計する必要があります。

Q.eラーニングでも助成金は使えますか

使えますが制限があります。経費助成のみで賃金助成はなく、上限額は中小企業15万円・大企業10万円です。さらに令和8年8月3日以降に提出した計画届では、eラーニングの受講は1労働者につき1年度で1回までに制限されました。

Q.研修が10時間に満たない場合はどうすればいいですか

国の助成金は実訓練時間数10時間以上が要件のため対象外です。熊本県の場合は、10時間未満の研修を対象とする「熊本県リスキリング応援補助金」があり、補助率75%・1事業者あたり50万円までとなっています。要件は県のページでご確認ください。

この記事を書いた人

中田 純平

ツナイデ・ムスブ 代表 / 熊本市

熊本を拠点に、生成 AI と業務自動化を使った中小企業の業務改善を支援。 ツールの紹介だけで終わらせず、現場で回るところまでを対面で伴走している。 この記事の料金・機能は、公開時点の各公式サイトの情報をもとにしています。

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