AI研修2026-10-03 公開約 9 分で読めます

社内AI研修を自前でやる進め方|教材作成と講師役、外部委託の線引き

社内でAI研修を自前でやる手順を整理しました。教材の作り方、講師役の決め方、内製と外部委託の線引きを表で示します。従業員5〜200名の製造業向けに、失敗しない範囲の絞り方まで書きます。

中田 純平 — ツナイデ・ムスブ

熊本市 / AI 導入支援・業務自動化

ホワイトボードの前で議論するチーム

結論——社内AI研修は「1業務・3時間・社内講師」なら自前で回せる

社内でAI研修を自前でやるなら、対象業務を1つに絞り、3時間前後の短い回を社内講師で回す形から始めると失敗しにくいです。全社一斉や高度な内容は外部に頼むほうが安く済みます。

自前が向くのは、現場の業務を知る人が講師を務め、自社のデータや書式で例題を作れる場合です。逆に、受講者が全員初めてで教える人もいない状態では、最初の1回だけ外部に頼むほうが早いです。

この記事では、講師役の決め方、教材の作り方、外部に頼むべき範囲の線引きを順に整理します。

この記事の対象と前提

想定するのは従業員5〜200名の製造業です。情シス専任がいない会社、現場がスマホで動く会社を前提にします。

  • 現場の人はPCの前にいないことが多い
  • 総務や製造管理が兼務で研修を回す
  • まず1業務で試したいのが本音

自前・外部・併用のどれを選ぶか

最初から全部を自前でやる必要はありません。教材作りだけ外部、実施は社内という併用も現実的です。判断軸は後半の表で示します。

社内AI研修を自前でやるとは何か

社内AI研修を自前でやるとは、外部講師を呼ばず、社内の人が教材を作り、社内の人が教える形を指します。会議室に集めてもオンラインでも構いません。

ここでいうAI研修は、生成AI(文章や画像を作るAI)を日常業務で使えるようにする研修を指します。難しい理論ではなく、見積の下書きや議事録の要約など、手を動かす内容が中心です。

用語の意味をもう少し知りたい場合はAI・DXの用語集を参照してください。

外注研修と自前研修の違い

外注研修は体系だった教材と慣れた講師が強みです。一方で、自社の業務にそのまま使える例題は作りにくいです。

自前研修は逆です。自社のデータや書式を使った例題を作れるため、受講者が「明日から使える」と感じやすいです。

自前で最初に決める3つのこと

着手前に次の3つを決めます。ここが曖昧だと研修が散漫になります。

  1. 対象業務——日報、見積、議事録など1つに絞る
  2. 受講者——誰が受けるか、人数は何人か
  3. 講師役——社内の誰が教えるか

内製と外部委託の線引き——どこまで自前でやるか

自前でやるか外部に頼むかは、内容の難易度と社内に教えられる人がいるかで決めます。すべてを自前に寄せる必要はありません。

下の表で、内製が向く範囲と外部が向く範囲を整理します。

項目 内製が向く 外部委託が向く
内容の難易度 基本操作・社内業務への応用 高度な自動化・専門分野
教える人 業務を知る社員がいる 社内に教えられる人がいない
教材 自社の書式・データで作る 体系だった汎用教材が要る
人数 少人数(1〜20名) 全社一斉・多拠点
コスト 人件費が中心 受講料・講師料が中心
更新 社内で随時直せる 都度の追加発注になる

内製で詰まりやすい線引き

現場の業務は社内が一番詳しいです。一方で、AI側の仕組みや情報の扱いは外部のほうが整理されています。

  • 業務への当てはめは内製が強い
  • 情報の取り扱いルールは外部の知見が役立つ
  • 自動化の設計は専門家に任せるほうが安全

「併用」が一番現実的なケース

多くの会社は、最初の1回を外部に頼み、2回目以降を社内で回す形が合います。外部の教材を土台に、社内で業務向けに作り替える進め方です。

関連記事:企業向けAI研修の選び方|eラーニング・集合・伴走の違いと確認項目

AI研修の講師役の決め方——社内の誰に任せるか

講師役は、AIに詳しい人ではなく、業務を知っていて伝えるのがうまい人を選ぶほうが定着します。操作は一緒に手を動かせば覚えられます。

候補の特徴を表で比べます。

候補 強み 弱み 向く研修
若手のPC得意な社員 操作が速い 業務理解が浅い 基本操作の回
製造管理・現場リーダー 業務に精通 教える準備に時間 業務応用の回
総務・情シス兼務 全体を見渡せる 現場実務は遠い ルール・運用の回
外部講師 教え方が安定 自社業務は浅い 立ち上げの初回

講師1人に背負わせない

講師を1人に固定すると、その人が辞めたときに研修が止まります。操作担当と業務担当の2人体制にすると負担が分散します。

  • 操作のデモは若手
  • 業務での使い方はリーダー
  • 全体進行は兼務担当

講師の準備にかける時間

講師役の準備は、3時間の研修なら半日から1日が目安です。例題を自社の実データで作る時間が一番かかります。

準備時間も人件費としてコストに含めて考えます。無料ではない点を見落とさないようにします。

AI研修の教材の作り方——ゼロから作らない

教材はゼロから作らず、公開教材と自社の実データを組み合わせると早く仕上がります。基礎の説明は既存資料で足ります。

自社で作るべきは、業務に直結した例題の部分だけです。

教材を作る4つの手順

  1. 公開教材で基礎を押さえる——操作の基本は市販や無料資料を使う
  2. 自社の実データで例題を作る——過去の日報や見積を題材にする
  3. やってはいけない例を載せる——顧客情報の扱いなど禁止事項を明記
  4. 1枚の手順書にまとめる——スマホで見られる形にする

現場がスマホで見られる形にする

製造現場はPCの前にいません。教材をPDFや長い文書で配ると読まれません。

スマホで開ける短い手順書にします。画面の写真を貼り、押す場所を矢印で示すだけで十分です。

熊本の現場ではLINEでの連絡が根付いています。既存のチャットで教材を配ると開いてもらいやすいです。

例題は必ず自社の書式で作る

汎用の例題は「うちの仕事と違う」と感じられて終わります。自社の見積書式や日報の項目をそのまま例題にします。

関連記事:生成AI研修で何を教えるべきか|初日で全員使えるカリキュラムと時間配分

AI研修の実施形式——集合・オンライン・自習の使い分け

実施形式は受講者がPCの前にいるかどうかで決めます。現場中心なら集合、間接部門ならオンラインが回しやすいです。

形式ごとの向き不向きを表で整理します。

形式 向く対象 強み 弱み
集合(会議室) 現場・少人数 その場で質問できる 全員の時間を押さえる
オンライン 多拠点・間接部門 移動が要らない 手を止めやすい
自習(動画・手順書) 操作の基礎 各自の時間でできる 質問の場がない
併用 全社 基礎は自習、応用は集合 設計に手間

現場は「短く・手を動かす」

現場向けは1回3時間までに抑えます。説明を聞くだけでなく、その場で自分の業務を1つやってみる時間を必ず入れます。

  • 前半30分で操作のデモ
  • 残りは各自が実データで試す
  • 最後に成果を1人ずつ共有

間接部門はオンラインと自習の組み合わせ

総務や経理はPCがあります。基礎は動画の自習、応用はオンラインの質問回に分けると、全員の時間を奪いません。

社内AI研修の費用——自前でも発生するコスト

自前でも費用はゼロになりません。講師の準備時間、受講者の拘束時間、ツールの利用料が発生します。見えにくい人件費を見積もることが先です。

費用の内訳を表で整理します。金額は会社の人件費単価で変わるため、自社の数値で計算してください。

費目 自前 外部委託
講師料 発生しない 発生する
講師の準備時間 人件費として発生 発生しない
受講者の拘束時間 両方で発生 両方で発生
教材費 自作なら低い 受講料に含む
ツール利用料 発生する 発生する場合あり

「安く見える」自前の落とし穴

自前は講師料が要らないため安く見えます。一方で、準備と受講の時間をすべて人件費に換算すると、思ったより高くつく場合があります。

準備に半日、受講に3時間×人数を時給で計算してみてください。外部委託と比べる土台ができます。

助成金が使えるかを確認する

外部委託の研修は、助成金の対象になる場合があります。自前の研修は対象の範囲が異なります。

助成金の要件と助成率は年度で変わります。**デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)**や人材開発支援助成金は、公募要領と厚生労働省の最新資料で確認してください。採択や支給は保証されません。

関連記事:AI研修に使える助成金|中小企業75%の条件と、2026年8月改正で対象外になった研修

外部に頼むべき範囲——内製で詰む3つの場面

次の3つの場面は、無理に自前でやらず外部に頼むほうが早く安全です。社内に教えられる人がいない、情報の扱いが不安、自動化を組みたいの3つです。

① 社内に教えられる人が1人もいない

誰もAIを触ったことがない状態で自前を始めると、間違った使い方が広がります。最初の1回だけ外部に頼み、社内講師を育ててもらうのが近道です。

② 情報の取り扱いに不安がある

顧客情報や図面をAIに入れてよいかは、判断を誤ると事故になります。入力してよい情報の線引きは、外部の知見を借りたほうが安全です。

  • 顧客の個人情報は入れない
  • 図面や原価は扱いを決めてから
  • 無料版と有料版で扱いが違う

③ 業務の自動化まで組みたい

研修で終わらず、受注や在庫の処理を自動化したい場合は専門の設計が要ります。研修と自動化の設計は別物です。切り分けて考えてください。

関連記事:中小企業がAIを入れる最初の一歩。どの業務から始めれば失敗しないか

AI研修を自前でやったあと定着させる仕掛け

研修はやった直後ではなく、1か月後に使われているかで成否が決まります。自前の強みは、社内でいつでも手直しできる点です。

直後・1か月・3か月でやること

  • 直後——手順書を全員が見られる場所に置く
  • 1か月後——使えた業務を1つ共有する
  • 3か月後——使われていない機能を削る

使われないまま終わらせない

研修後に放置すると、現場は元の紙とExcelに戻ります。週1回、使った例を1つ出し合うだけで定着が変わります。

関連記事:AI研修が使われない理由と研修後に定着させる仕掛け|直後・1か月・3か月でやること

社内AI研修を自前で始める、今日やる1つのこと

今日やることは1つです。対象業務を1つだけ紙に書き出してください。日報、見積、議事録のどれか1つで構いません。

業務が決まれば、講師役と教材の範囲が自然に絞れます。全社の話に広げず、1業務・3時間・社内講師の小さな形から始めてください。

よくある質問

Q.社内AI研修を自前でやるのと外部委託、どちらが安いですか

自前は講師料が要らない分だけ安く見えます。ただし講師の準備時間と受講者の拘束時間を人件費に換算すると、少人数では外部委託と大きく変わらない場合があります。準備半日と受講3時間×人数を時給で計算して比べてください。

Q.AIに詳しい社員がいなくても自前の研修はできますか

全員が初めての状態では、最初の1回だけ外部に頼むほうが早いです。その際に社内講師を育ててもらい、2回目以降を自前に切り替える併用が現実的です。業務を知る社員がいれば、応用の回は自前で回せます。

Q.教材はゼロから作る必要がありますか

ゼロから作る必要はありません。操作の基礎は公開教材や無料資料で足ります。自社で作るのは、過去の日報や見積を使った業務直結の例題と、顧客情報の扱いなど禁止事項の部分だけです。

Q.現場がスマホしか使わない工場でも自前研修はできますか

できます。教材をPDFや長文にせず、スマホで開ける短い手順書にします。画面の写真に押す場所を矢印で示す形が向きます。既存のLINEやチャットで配ると開いてもらいやすいです。

Q.自前の研修でも助成金は使えますか

外部委託の研修と自前の研修では対象の範囲が異なります。助成金の要件と助成率は年度で変わるため、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)や人材開発支援助成金の公募要領と厚生労働省の最新資料で確認してください。採択や支給は保証されません。

Q.講師役は1人に任せても大丈夫ですか

1人に固定すると、その人が辞めたときに研修が止まります。操作のデモを担う若手と、業務での使い方を教えるリーダーの2人体制にすると負担が分散します。進行は兼務担当が担うと回しやすいです。

この記事を書いた人

中田 純平

ツナイデ・ムスブ 代表 / 熊本市

熊本を拠点に、生成 AI と業務自動化を使った中小企業の業務改善を支援。 ツールの紹介だけで終わらせず、現場で回るところまでを対面で伴走している。 業務自動化の構築 14 社、研修登壇は累計 3,000 名以上。 この記事の料金・機能は、公開時点の各公式サイトの情報をもとにしています。

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