工場の業務改善の具体例|時間を食う作業の見つけ方と優先順位
工場の業務改善で効果が出やすい作業と、手をつけないほうがよい作業の見分け方を整理します。現場で時間を食う作業の見つけ方、改善の優先順位のつけ方、工程別の具体例を表で示します。
中田 純平 — ツナイデ・ムスブ
熊本市 / AI 実装スタジオ
結論——工場の業務改善は毎日繰り返す転記作業から始める
工場の業務改善で最初に手をつけるべきは、毎日発生し、人によってやり方が変わらない転記作業です。日報の清書、Excelへの手入力、検査記録の集計がこれにあたります。頻度が高く、判断が要らない作業ほど、削った時間がそのまま積み上がります。
逆に、月1回しか起きない作業や、熟練者の判断が必要な作業は後回しにします。改善の順番を間違えると、手間をかけた割に時間が戻ってこないからです。本記事では、時間を食う作業の見つけ方と、優先順位のつけ方を工程別に整理します。
この記事で分かること
- 現場で本当に時間を食っている作業の見つけ方
- 効果が出やすい作業と、後回しでよい作業の見分け方
- 工程別の改善具体例と、20名規模での始め方
前提——全社導入から入らない
工場の業務改善は、全社一斉ではなく1つの業務から始めます。まず1工程で試し、効果を確かめてから広げる進め方が現実的です。最初から大きく変えようとすると、現場が付いてこず途中で止まります。
工場の業務改善とは何か——ムダ取りとの違い
工場の業務改善とは、現場の作業時間や手間を減らし、同じ人数でこなせる仕事量を増やす取り組みです。設備投資だけを指すのではありません。紙やExcelでの情報のやり取りを見直すだけでも、時間は戻ってきます。
従来の改善は、機械の配置や動線といった「モノの流れ」が中心でした。人手不足の今は、情報の流れの改善が効きます。同じ数字を何度も書き写す、電話で在庫を確認する、といった作業が対象です。
情報の流れが詰まっている典型
情報の流れが詰まると、次のような作業が生まれます。
- 現場の紙をあとで事務所のExcelに打ち直す
- 別々の帳票に同じ数字を何度も書く
- 「昨日の生産数は?」を電話や口頭で確認する
- 図面や手順書の最新版がどれか分からない
これらは付加価値を生みません。製品の品質を上げるわけでも、数を増やすわけでもないからです。
改善の効果は時間で測る
改善の効果は、金額ではなく削れた時間で測ると判断しやすくなります。「日報集計に週5時間かかっていた作業が週1時間になった」の形です。時間で測る考え方は、「月いくら」ではなく「何時間短くなるか」で値段を決める記事でも整理しています。
現場で時間を食う作業の見つけ方——3日間の記録
時間を食う作業は、3日間だけ全員に作業時間を記録してもらうと見つかります。感覚ではなく、実際の時間を書き出すのが出発点です。経営者や工場長が思う「大変な作業」と、実際に時間を食っている作業はずれます。
記録は難しく考えません。紙のメモでも、スマホのメモアプリでも構いません。何の作業に、何分かかったかを書くだけです。
記録するときの3つの区分
作業を次の3区分で色分けすると、削る対象が見えます。
| 区分 | 内容 | 改善の対象か |
|---|---|---|
| 主作業 | 加工・組立・検査など製品に直接関わる | 対象外に近い |
| 付随作業 | 段取り・材料運搬・記録の記入 | 一部が対象 |
| ムダ | 転記・待ち・探し物・二重入力 | 最優先で対象 |
「探し物」と「二重入力」に使う時間は、多くの工場で想像より大きくなります。図面や手順書を探す時間、同じ数字を紙とExcelに書く時間が代表です。
3日で見えてくること
3日間記録すると、次の傾向が読み取れます。
- 誰がやっても同じ結果になる単純作業はどれか
- 特定の人しかできない作業はどれか
- 1日のうち待ち時間がどこで発生しているか
単純作業ほど、道具に置き換えたときの効果が読みやすくなります。
現場の人はPCの前にいない
記録を集めるとき、現場の人にPC入力を求めないでください。スマホやタブレットで数タップ、または紙で回収する形にします。入力の手間が増えると、記録そのものが続きません。
改善の優先順位のつけ方——頻度×時間×難易度
優先順位は、頻度・1回あたりの時間・改善の難易度の3つで決めます。頻度が高く、時間がかかり、改善が簡単な作業から着手します。次の表を目安にしてください。
| 判断軸 | 高い(優先) | 低い(後回し) |
|---|---|---|
| 発生頻度 | 毎日・毎シフト | 月1回・年数回 |
| 1回の時間 | 30分以上 | 数分 |
| 判断の要否 | 判断が要らない | 熟練の判断が必要 |
| 関わる人数 | 全員が同じ作業 | 1人だけの作業 |
| 改善の難易度 | 道具の入れ替えで済む | 業務の作り直しが要る |
最優先ゾーンの見分け方
最優先は、毎日発生・判断不要・全員が同じやり方の3つがそろう作業です。日報の転記、検査記録の集計、勤怠の集計がここに入ります。誰がやっても結果が同じなので、道具に任せやすくなります。
後回しにするゾーン
月1回の棚卸しや、年数回の設備更新は後回しにします。頻度が低く、改善しても戻る時間が小さいからです。頻度の低い作業に時間をかけると、投資が回収しにくくなります。
効果が出やすい作業の特徴——5つの条件
効果が出やすい作業には、共通する5つの条件があります。条件を多く満たすほど、改善後の時間短縮が大きくなります。
① 毎日繰り返し発生する
毎日発生する作業は、1回の短縮が小さくても積み上がります。週5日×1年で年間240回以上繰り返すため、削った時間が大きくなります。日報や生産数の記録が代表です。
② 同じ数字を2回以上書いている
紙に書いた数字をExcelに打ち直す二重入力は、片方を消せます。スマホで入力すれば自動で集計まで進むからです。二重入力の解消は、製造業の日報電子化の記事で手順を整理しています。
③ 判断が要らない
単純な集計や転記は、計算式や自動化に置き換えられます。人の判断が入らないので、機械に任せても品質が下がりません。
④ 集計や検索に時間がかかる
Excelが重くなり、ファイルを開くだけで待たされる状態は改善の合図です。データベース型の道具に移すと、検索と集計が速くなります。移し時の見分け方はLark BaseとExcelの違いの記事にまとめています。
⑤ 複数人が同じ作業をしている
全員が同じ帳票を書いているなら、様式をそろえて共有すると効果が大きくなります。1人だけの作業より、改善の効果が人数分に広がります。
手をつけないほうがよい作業の見分け方——対象外の4つ
改善に向かない作業もあります。無理に道具化すると、かえって手間が増えるケースです。次の4つは慎重に判断してください。
| 対象外になりやすい作業 | 理由 |
|---|---|
| 熟練者の目視判断 | 経験の言語化が難しく、道具化のコストが高い |
| 月1回以下の作業 | 頻度が低く、戻る時間が小さい |
| 例外だらけの作業 | ルール化できず、自動化が破綻する |
| 取引先都合の帳票 | 相手の様式に縛られ、自社だけでは変えられない |
熟練者の判断は残す
傷や色ムラの目視検査は、熟練者の判断が入ります。無理に自動化しようとすると、開発費がかさみ、精度も安定しません。まずは記録の入力だけをスマホ化し、判断そのものは人に残す進め方が現実的です。
例外が多い作業は先にルールを整える
「この客だけ特別対応」が多い作業は、道具化の前にルール整理が要ります。例外を残したまま自動化すると、例外対応で作業がかえって増えます。
工程別の改善具体例——設計・製造・品質・事務
工程ごとに、効果が出やすい改善の具体例を整理します。自社の工程から探してください。規模別の活用は製造業のAI活用事例を工程別に整理した記事も参考になります。
設計・開発
- 図面の最新版管理を共有フォルダやデータベースで一元化する
- 過去の類似図面を検索できるようにして、探し物を減らす
- 変更履歴を残し、どの版が最新か迷わない状態にする
図面の探し物は、設計の付随作業のなかで削りやすい部分です。
製造ライン
- 日報と生産数をスマホ入力にして、集計を自動化する
- 作業手順書をタブレットで見られるようにする
- 不良の報告を写真付きでその場から送れるようにする
日報の自動集計は、最も効果が読みやすい改善です。毎日発生し、判断が要らないためです。
品質管理・検査
- 検査記録をタブレット入力にして、転記をなくす
- 規格外の数値が入ったら自動で通知する
- 検査データを蓄積し、傾向を後から見られるようにする
目視判断そのものは人に残し、記録の入力だけをデジタル化する切り分けが現実的です。
事務・間接部門
- 稟議や経費の承認を紙からデジタルに移す
- 勤怠とシフトの集計を自動化する
- 取引先への連絡と社内連絡の窓口をそろえる
承認業務の進め方はLarkの承認機能の記事で整理しています。
改善に使う道具の選び方と費用の考え方
道具は、現場がスマホで入力でき、集計が自動で進むものを選びます。専用システムをいきなり買う前に、既存の道具で試せる範囲を確かめてください。
道具を選ぶ3つの基準
| 基準 | 確認する内容 |
|---|---|
| 入力のしやすさ | 現場がスマホ・タブレットで数タップで入力できるか |
| 集計の自動化 | 入力後に手作業の集計が残らないか |
| 費用の見通し | 人数が増えても料金が読めるか |
費用は削れる時間から逆算する
道具の費用は、削れる時間から逆算して判断します。週5時間の作業が週1時間になれば、月あたり約16時間が戻ります。戻る時間の人件費換算と、道具の月額を比べて判断してください。具体的な料金は各サービスの公式サイトで最新を確認してください。
補助金が使える場合がある
道具の導入費は、補助金の対象になる場合があります。要件と助成率は年度で変わるため、公募要領で最新を確認してください。熊本の対象制度は熊本で使える補助金5つの記事に整理しています。採択や支給を保証するものではありません。
工場の業務改善で失敗する3つのパターン
工場の業務改善は、進め方を誤ると途中で止まります。よくある3つのパターンを避けてください。
① 全社一斉に変えようとする
最初から全工程を変えると、現場が混乱して定着しません。1工程・1業務から試すのが定着の近道です。効果を確かめてから次に広げます。
② 現場にPC入力を求める
現場はPCの前にいません。PC入力を前提にすると、結局あとで事務所が打ち直す二重入力が残ります。スマホ入力を前提に設計してください。
③ 効果を測らずに導入する
導入前の作業時間を測らないと、改善できたか判断できません。3日間の記録を導入前に取っておくと、前後の比較ができます。生成AIなどの新しい道具を使う場合も、まず小さく試す進め方が失敗を減らします。用語はAI・DXの用語集も参考にしてください。
工場の業務改善、今日始める1つの作業
工場の業務改善で今日始めるなら、明日から3日間、全員に作業時間を記録してもらう準備をしてください。何の作業に何分かかったかを、紙かスマホのメモで書き出すだけです。
3日分の記録を、主作業・付随作業・ムダの3区分に色分けします。ムダに分類された作業のうち、毎日発生し判断が要らないものが、最初の改善対象です。まず1つの作業から試し、削れた時間を確かめてから次に進んでください。
よくある質問
Q.工場の業務改善は何から始めればいいですか
毎日発生し、判断が要らない転記や集計作業から始めます。日報の清書、検査記録の集計、勤怠集計が代表です。頻度が高く、削った時間が積み上がるため効果が読みやすくなります。
Q.時間を食っている作業はどうやって見つけますか
3日間だけ全員に作業時間を記録してもらうと見つかります。何の作業に何分かかったかを紙かスマホで書き出すだけです。主作業・付随作業・ムダの3区分に色分けすると、削る対象が見えます。
Q.手をつけないほうがよい作業はどれですか
熟練者の目視判断、月1回以下の作業、例外が多い作業、取引先都合の帳票は後回しにします。道具化のコストが高い、または頻度が低く戻る時間が小さいためです。
Q.現場の人はPCが苦手ですが業務改善できますか
できます。現場にPC入力を求めず、スマホやタブレットで数タップ入力する形にします。入力の手間が増えると記録が続かないため、現場が使える道具を前提に設計してください。
Q.改善の効果はどう測ればいいですか
金額ではなく削れた時間で測ると判断しやすくなります。導入前に3日間の作業時間を記録しておくと、導入後との比較ができます。前後の時間差が改善の効果です。
Q.業務改善に補助金は使えますか
道具の導入費が補助金の対象になる場合があります。要件と助成率は年度で変わるため、公募要領で最新を確認してください。採択や支給が保証されるものではありません。
この記事を書いた人
中田 純平
ツナイデ・ムスブ 代表 / 熊本市
熊本を拠点に、生成 AI と業務自動化を使った中小企業の業務改善を支援。 ツールの紹介だけで終わらせず、現場で回るところまでを対面で伴走している。 この記事の料金・機能は、公開時点の各公式サイトの情報をもとにしています。
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