AI導入2026-10-15 公開約 8 分で読めます

生成AIに入力してよい情報とだめな情報|中小企業の社内ルールの作り方

中小企業が生成AIを業務で使うとき、入力してよい情報とだめな情報の線引きを整理しました。無料版と有料版の違い、社内ルールの作り方、製造業の工程別の目安まで表でまとめます。

中田 純平 — ツナイデ・ムスブ

熊本市 / AI 導入支援・業務自動化

チームで机を囲んで作業している様子

結論——生成AIに入力してよい情報は「公開済みか社内限定か」で線引きする

生成AIに入力してよいのは、すでに社外に公開されている情報と、漏れても損害が出ない情報です。顧客の個人情報・取引先の機密・未公開の図面やレシピは入力しないのが基本の線引きになります。

生成AIとは、文章や画像を自動でつくるAIのことです。ChatGPTが代表例になります。便利な一方で、入力した内容がどこに保存され、学習に使われるかを把握しないまま使うと情報が漏れます。

まず社内で「入れてよいもの」と「入れてはいけないもの」を2つに分けます。次にA4一枚のルールにして全員に配ります。この順番で進めれば、専門知識がなくても事故を防げます。

この記事で分かること

  • 入力してよい情報とだめな情報の具体的な線引き
  • 無料版と有料版で情報の扱いがどう違うか
  • A4一枚で作る社内ルールの中身
  • 製造業の工程別に見た判断の目安

まず押さえる3つの原則

  1. 迷ったら入れない。判断がつかない情報は入力を止めます。
  2. 個人情報と取引先の機密は、匿名化してから使います。
  3. ルールは1枚にまとめ、現場のスマホから見られる場所に置きます。

生成AIに入力してはいけない情報の種類

入力してはいけないのは、漏れると損害や信用低下につながる情報です。中小企業でよく扱う情報を4つに分けて整理します。

個人情報と従業員の情報

顧客名簿・従業員の氏名・住所・マイナンバーは入力しません。個人情報保護法の対象になり、漏えいすれば報告義務が生じます。履歴書や健康診断の結果も同じ扱いになります。

要約や文章作成でどうしても使いたいときは、名前を「A様」に置き換えます。固有名詞を消してから入力する習慣をつけます。

取引先の機密と契約情報

取引先から受け取った図面・仕様書・価格表は入力しません。**秘密保持契約(NDA)**を結んでいる情報は、AIへの入力も契約違反になり得ます。

熊本ではTSMC関連の取引で、受け取る図面や仕様の管理が厳しく問われます。取引先の資料をAIに通す前に、契約書の守秘条項を必ず確認します。

自社の未公開ノウハウ

製造の手順書・配合レシピ・独自の加工条件は自社の資産です。無料版に入力すると、学習に使われて外部に出る可能性があります。未公開の見積原価や利益率も入れません。

入力を避ける情報の一覧

情報の種類 具体例 理由
個人情報 顧客名簿・従業員情報・マイナンバー 法律の対象。漏えいで報告義務
取引先の機密 図面・仕様書・価格表 NDA違反になり得る
自社ノウハウ 手順書・配合・加工条件 競争力の源泉が流出
認証情報 ID・パスワード・APIキー 不正アクセスの入口

入力してよい情報と判断に迷う情報の見分け方

入力してよいのは、公開済みの情報と、個人や取引先を特定できない情報です。迷う情報は匿名化すれば使える場合が多くあります。

入力してよい情報の例

  • 自社サイトやカタログに載せている公開情報
  • 一般的な文章の校正やメールの下書き
  • 法律や制度の一般的な説明を尋ねる質問
  • 固有名詞を消した問い合わせ文の要約

これらは漏れても損害が出にくい情報です。安心して日常業務に使えます。

匿名化すれば使える情報

顧客からのクレーム文を要約したいときは、会社名と担当者名を消します。「◯◯社」を「取引先A」に置き換えるだけで、多くの情報は安全に使えます。

見積の文面を整えたいときも、金額と相手先を伏せて文章だけAIに通します。数字は後から自分で戻します。

入力可否の早見表

状況 判断 対応
公開済みの情報 入力してよい そのまま使える
固有名詞を含む 匿名化すれば可 名前を記号に置換
NDA対象の資料 入力しない 契約を優先
判断がつかない 入力しない 上長に確認

製造業での具体的な線引きは、製造業でChatGPTを業務に使う|見積下書きと入力の線引きでも整理しています。

なぜ無料版と有料版で情報の扱いが違うのか

無料版は入力内容が学習に使われる場合があり、有料の法人向けは学習に使わない設定が選べます。この差が情報の扱いを大きく分けます。

学習に使われるとは何か

入力した文章をAIが覚えて、ほかの利用者への回答に出す可能性があることを指します。無料版では初期設定で学習がオンのサービスもあります。機密を無料版に入れると、外部に出る前提で考える必要があります。

法人向けプランで変わる点

法人向けや有料のビジネスプランでは、入力データを学習に使わない契約が一般的です。保存期間やデータの保管場所も管理画面で設定できます。社内で機密を扱うなら、法人向けの利用を前提にします。

プラン選びの比較

比較軸 無料版 法人・有料版
学習への利用 使われる場合あり 使わない設定が可能
データ保管 設定が限られる 期間・場所を管理
利用者の管理 個人任せ 管理者が一括管理
向く用途 公開情報の下書き 社内情報を含む業務

契約内容は各サービスで変わります。学習利用の有無は、申し込み前に公式の規約で確認します。

生成AIの社内ルールの作り方(5つの手順)

社内ルールは、入力の線引きと使ってよいツールを1枚にまとめるだけで動き出します。5つの手順で作ります。

① 使ってよいツールを1つ決める

最初は使うAIを1つに絞ります。複数を同時に許すと管理が難しくなります。法人向けプランで学習オフにできるものを選びます。

② 入力してよい情報を3行で書く

「公開情報はOK」「固有名詞は消す」「迷ったら入れない」の3行で十分です。長い規定より、守れる短い文にします。

③ 入力してはいけない情報を列挙する

個人情報・取引先の機密・自社ノウハウ・パスワードを名指しで書きます。抽象的な言葉ではなく具体例を添えます。

④ 違反時の連絡先を決める

誤って機密を入れたときに、誰に報告するかを決めます。隠すより早く報告したほうが被害を抑えられます。

⑤ 出力の確認を義務にする

AIの回答には誤りが混じります。事実と違う内容をもっともらしく出す現象をハルシネーションと呼びます。最終確認は必ず人が行うと決めます。用語はAI・DXの用語集で確認できます。

社内ルールに入れる項目

項目 書く内容
使うツール 許可するAIを1つ指定
入力OK 公開情報・匿名化した文章
入力NG 個人情報・機密・パスワード
報告先 誤入力時の連絡相手
確認義務 出力は人が最終確認

現場に浸透させるルールの書き方

現場に届くルールは、A4一枚でスマホから読めるものです。分厚い規定は読まれません。

A4一枚にまとめる

入力OK・NG・報告先の3つを1枚に収めます。壁に貼るか、スマホのトップに置くと定着します。現場はPCの前にいないため、スマホで見られる形が前提になります。

具体例で見せる

「クレーム文は会社名を消してから要約する」のように、実際の作業で示します。抽象的な禁止事項だけでは守られません。

定期的に見直す

サービスの規約や料金は年度で変わります。半年に一度はルールを読み返し、使うツールと規約を確認します。失敗の起きやすい条件は製造業のAI導入でつまずく5つのパターンと原因にまとめています。

情報が漏れる失敗パターン

情報漏れの多くは、禁止情報と知らずに入力することで起きます。中小企業で起きやすい4つを挙げます。

よくある失敗

  • 無料版に顧客名簿を貼り付けて要約させる
  • 取引先の図面をそのままAIに読ませる
  • パスワードを含む設定手順を質問する
  • 誤入力を報告せず、そのまま放置する

どれも悪意ではなく、便利さを優先した結果です。ルールがあれば防げます。

失敗パターンと対策

失敗 起きる原因 対策
名簿を入力 匿名化の習慣がない 固有名詞を消す
図面を入力 NDAを確認していない 契約を先に確認
認証情報を入力 危険性の認識不足 一覧で明示
誤入力の放置 報告先が不明 連絡先を決める

製造業の工程別に見た線引きの目安

製造業では工程ごとに扱う情報が違い、線引きも変わります。工程別に目安を整理します。

設計・製造・品質・事務の目安

設計は図面を扱うため、入力は原則避けます。製造は手順書が自社ノウハウにあたります。品質は検査記録に取引先情報が混じります。事務は公開情報が多く、使いやすい工程です。

工程 扱う情報 入力の目安
設計・開発 図面・仕様 原則入力しない
製造ライン 手順・加工条件 ノウハウは避ける
品質・検査 検査記録 固有名詞を消す
事務・間接 社内文書・メール 匿名化で使える

従業員20名の工場ならどこから始めるか

情シス専任がいない20名規模なら、事務の文章作成から始めます。メールの下書きや議事録の要約は機密を含みにくく、事故が起きにくいためです。

慣れてから品質や製造に広げます。最初から全工程に入れると管理が追いつきません。1業務から試す進め方は中小企業がAIを入れる最初の一歩で整理しています。

生成AIの社内ルール、今日作る最初の一歩

今日やることは、使ってよいAIを1つ決めて、入力NGの情報を4つ書き出すだけです。個人情報・取引先の機密・自社ノウハウ・パスワードの4つをA4一枚に書きます。

この1枚を現場のスマホから見られる場所に置けば、情報の事故は大きく減ります。完璧な規定を作る前に、守れる短いルールを先に配ることが、生成AIを安全に使う出発点になります。

よくある質問

Q.生成AIに顧客の個人情報を入力してもいいですか

顧客名簿やマイナンバーなどの個人情報は入力しないのが基本です。どうしても使う場合は名前を記号に置き換え、個人を特定できない形にしてから入力します。

Q.無料版のChatGPTで社内の機密を扱っても大丈夫ですか

無料版は入力内容が学習に使われる場合があり、機密の入力は避けます。社内情報を扱うなら、学習オフの設定ができる法人向けプランを前提にします。

Q.社内ルールはどのくらいの分量で作ればいいですか

A4一枚で十分です。入力してよい情報・だめな情報・誤入力時の報告先の3つをまとめ、現場のスマホから読める場所に置きます。長い規定は読まれません。

Q.取引先からもらった図面をAIに読ませてもいいですか

秘密保持契約の対象なら入力しません。AIへの入力も契約違反になり得ます。読ませる前に契約書の守秘条項を必ず確認してください。

Q.AIが出した回答をそのまま使ってよいですか

そのまま使わず、人が最終確認します。生成AIは事実と違う内容をもっともらしく出すことがあります。数値や固有名詞は必ず元の資料と照合します。

Q.従業員が少ない会社でもルールは必要ですか

必要です。人数が少ないほど1人の誤入力が全体に響きます。まず使ってよいAIを1つ決め、入力NGの情報を書き出すだけでも事故を減らせます。

この記事を書いた人

中田 純平

ツナイデ・ムスブ 代表 / 熊本市

熊本を拠点に、生成 AI と業務自動化を使った中小企業の業務改善を支援。 ツールの紹介だけで終わらせず、現場で回るところまでを対面で伴走している。 業務自動化の構築 14 社、研修登壇は累計 3,000 名以上。 この記事の料金・機能は、公開時点の各公式サイトの情報をもとにしています。

関連記事